ドイツワインとアジア料理のペアリング
Wines of Germany 様よりご招待をいただき「2021年おすすめドイツワイン30選」〜ドイツワインとアジア料理のハーモニー〜 の、インフルエンサー向け発表会にお邪魔してまいりました。
若い世代の方からも人気のアジアンテイストの料理、ワインと合わせる時にはどんな点に意識したら良いのでしょうか。
実際に試したアジア料理&ドイツワインのペアリングについて、ご紹介していきます!
アジア料理もドイツワインも好きですが、なかなか合わせる経験がなかったので大変楽しみに伺いました♪
ペアリングをする時のご参考になれば幸いです。
…とその前に、ドイツワインの基本について簡単に解説しますね!
Contents
ドイツワインの基礎知識
近年は「辛口」が伸長
ドイツワインと聞くと「甘口」のイメージを持たれることが少なくありません。
世界三大貴腐ワインのひとつ「トロッケンベーレンアウスレーゼ」は、ドイツの気候風土が生み出す極上の甘口ワインとして、世界的な名声を得ていますね。
戦後の高度経済成長期には甘口ワインがブームになり、日本にも多くのドイツ産甘口ワインが輸入されていました。
ところが1990年代後半以降、世界的な辛口白ワインのブームが到来します。
ドイツワイン産業は一時は低迷しましたが、21世紀に入り最新の栽培・醸造技術を習得した多くの醸造家の尽力により、ドイツワインが再び活況を取り戻していきます。
ドイツの至宝である「リースリング」をはじめ、ピノ・ノワール(ドイツではシュペートブルグンダー)やピノ・ブラン(ドイツではヴァイスブルグンダー)などの国際品種を用いた、食中酒として最適な高品質の辛口白ワインや赤ワインが造られています。
味わいの特徴
ドイツワインのイメージといえば、繊細で涼やか、透明感がある印象。
白ワインは上品な甘味と柔らかな酸味のバランスに優れ、冷涼な気候であることからアルコール感も控えめで気品ある佇まいを感じます。
北半球のワイン産地の中でも高緯度なドイツでは、日の光を最大限に享受できるよう、多くの畑が川沿いの急な斜面に開かれています。
こうすることで直射日光だけでなく、川面からの照り返しも受け、また夜間の冷え込みも和らげられるからです。
気温は上がらずとも、長い時間日照を受けることでブドウがゆっくりと成熟し、ワインの香味が複雑なものへとなるのですね。
アジア料理とのペアリング
今回イベントに登壇されたのは、パレスホテル東京 グランドキッチンのソムリエ瀧田昌孝さんと、香港カフェ「代官山 蜜香 mi-shang」店主の村木美沙シェフです。
村木シェフのアジアン料理のデモンストレーション、瀧田ソムリエによるペアリング解説をいただいた後に実食です。
お食事は下記の順番で、それぞれに合わせてセレクトされたワインがサーブされていきました。
①スパイシーな料理
②蒸し料理
③炒め物、揚げ物料理
④しょうゆ味の料理
⑤甘酢料理
まずは①〜③の盛り合わせです。
①スパイシーな料理に合うワイン
「茹で鶏の香味ピーナッツソースがけ」(写真左下)
🍷【スパークリングワイン(リースリング/モーゼル )】
スパークリングワインの泡が辛みをマスキングし、かつ流してくれる効果があるとのことで、ワインはモーゼル産「Riesling Brut Sekt(リースリング ゼクト ブリュット)NV」を。
<ワインの特徴>
柑橘や白桃、ミネラル、蜜などの甘美なアロマに熟成香も感じ複雑な印象。
完熟リンゴのような濃密エキス&シャープな酸味とキレのバランスがとても良い、上質なゼクト(ドイツでいうスパークリングワイン)です。
<ペアリングの感想>
ワインのクリーミーな泡とシャープな酸味がピリ辛なピーナッツソースと絡み合い、調和をもたらします。
スパイシーな料理とキレのあるスパークリングワインの相性の良さが実感できました!
ワインがほんのりと持つ甘さによって口の中での膨らみが増す印象。
周りの方の反応も上々な組み合わせでした。
②蒸し料理に合うワイン
「広東式焼売」(写真右下)
🍷【白ワイン(ピノ・グリ/バーデン)】
蒸し料理は、油分も少なく食材の良さや魅力をシンプルに味わえる料理。
ワインを選ぶ時にも、素材そのものの持ち味がかき消されてしまわないよう、突出した香りがなくニュートラルでミネラル中心のものにするのがポイントとのことです。
そこでセレクトされたワインは、バーデンのカリスマ的生産者フランツ・ケラーが手がける「Oberbergener Bassgeige Grauburgunder Erste Lage(グラウブルグンダー・オーバーベルゲナー・バスガイゲ エアステ・ラーゲ)」。
グラウブルグンダーは「ピノ・グリ」のこと。
「バスガイゲ」は一級畑の名前です。
ドイツのブドウ品種名は読み解くにも少々苦労がありますね…笑
<ワインの特徴>
ワインは冷えた状態ではすっきり爽やかな印象で、青リンゴやレモン、ライム、柑橘の皮、白い花の香りなど。
温度が上がるにつれピノ・グリらしいコクや厚みが出てきて、白コショウのようなスパイシーさも感じられます。
<ペアリングの感想>
広東式焼売は海老がしっかり入り食感がプリッとしているのが特徴。
豚と海老が半々の量で、今回お酢を付けない代わりに新生姜をお酢に漬けたトッピングが乗せられていたのですが、、、
この生姜がアクセントとなり、ワインの酸味を引き立て次の一口を誘う素晴らしいペアリング!
今回感激したペアリング技のひとつでした。
ピノ・グリのオイリーさを伴った丸く柔らかいトーンが、皮のもっちりした質感や蒸した海老とも好相性でした。
③炒め物、揚げ物料理に合うワイン
「海老の金沙炒め」(写真右上)
海老をパン粉やニンニク、ナッツ、スパイスで一緒に炒め上げた料理。
「揚げ雲呑(ワンタン)」(写真左上)
豚のミンチにたけのこ、キクラゲで食感を持たせた一品。
🍷【白ワイン(ピノ・ブラン/ラインヘッセン)】
炒め物や揚げ物料理は、食材だけでなく調味料によっても大きく変わります。
ワインをペアリングさせる時には、
- 料理の香りや味わいと同調する要素を持つワインを選ぶ。
- 合わないと感じたらスパイスや醤などを加えることで同調部分を増やす。
- 料理の後味を切ってくれるワイン(泡、酸、タンニン、苦味)を合わせる。
このような点がポイントになってくるようです。
そこでセレクトされたワインは「Weißburgunder Trocken(ヴァイスブルグンダー トロッケン)」、生産者はヴァグナー・シュテンペル。
ヴァイスブルグンダーは「ピノ・ブラン」のことで、トロッケンは辛口であることを指します。
<ワインの印象>
ワインのカラーはグリーンを伴った淡いレモンイエローで、外観からフレッシュさや瑞々しさをイメージさせます。
香りからもピュアな印象を受け、リンゴや白い花、ハーブ、ミネラル、金柑など。
ジューシーで綺麗な果実味と上品な酸味、調和の取れたミネラル感や苦味、穏やかなアルコール感が心地よい味わい。
ほんのり樽のニュアンスとクリーミーな質感も絶妙です。
<ペアリングの感想>
ワインが持つ樽のニュアンスやクリーミーな質感、ハーブのニュアンスが、揚げ雲呑のサクサク感と苦味、香味野菜とよくマッチしました。
一方で、海老の金沙炒めはニンニクとパン粉の香ばしさが勝り、ワインの存在感が薄まる印象でした。
このワインは余韻に潮のミネラルも感じられるところから、魚介料理とも相性が良さそうです。
さて、お料理も後半へと移っていきます。
④しょうゆ味の料理に合うワイン
「牛肉の広東風醤油煮込み」(写真右)
🍷【赤ワイン(ピノ・ノワール/バーデン)】
「しょうゆ」は野菜、魚介類、白身の肉、赤身の肉など様々な食材に用いられます。
白であれば樽香を感じ柔らかなテクスチャーなもの、赤であればやや熟成感のあるピノ・ノワールが好相性とのことで、、、
ワインは「Malterdinger Spätburgunder(マルターディンガー シュペートブルグンダー)」、生産者はベルンハルト・フーバーがセレクトされました。
シュペートブルグンダーはドイツ語でいう「ピノ・ノワール」のことです。
<ワインの印象>
ピノ・ノワールらしく外観は明るく澄んでいて、ヴィンテージが2017ということで、外観からもやや熟成感が見えはじめた状態でした。
香りは涼やかでラズベリーやチェリー、ざくろなど赤い小さな果実やバラのニュアンス。樽からのスパイス香も。
フルーティで、上品な酸とタンニンを備えた高品質でバランスの良い1本です。
<ペアリングの感想>
醤油で煮込んだ近江牛の上質な脂の甘さと、ワインの味わいがよくマッチします。
同調することで互いの良さが高められる、素晴らしいペアリングとなりました。
⑤甘酢料理に合うワイン
「鯛の甘酢あんかけ」(写真左下)
🍷【白ワイン(リースリング/ラインガウ)】
甘酢を使った料理にワインをマッチングされる時には、ストレートに<甘やかなトーン&酸>の両方を持ち合わせたワインを選ぶと良く、さほど難しくはないとのこと。
それにプラス、前菜であればワインも軽やかに、魚介類や肉であればよりふくよかで構成がしっかりしたワインを。
素材のボリューム感や、香りの共通項を重ねることで相性の良さが高まります。
そういったポイントを踏まえながらセレクトされたワインは「Riesling Tradition(リースリング・トラディション)」、生産者はロバート・ヴァイルです。
<ワインの印象>
オイルや白桃、白い花など、ピュアでフローラルなど上品な香り。
味わい甘やかでジューシー、残糖と伸びやかな酸味のバランスを持った魅力あふれるワインです。
<ペアリングの感想>
ピュアで甘酸っぱいキャラクターのワインが甘酢とよく合います。
しかも甘酢にはアンズを入れてフルーティな要素がプラスされており、ワインと料理の双方がよりしっかりと調和します。
さっぱりとした質感もマッチし、両者が持つ柔らかな酸が素材の味わいを引き上げるようなペアリングでした。
そして、このリースリングはデザートのスイカの杏仁豆腐ともとても良い相性でしたよ♪
ドイツワインとアジア料理ペアリングTOP3
瀧田ソムリエからのレクチャーを受けながら試した数々のペアリングの中で、私が最も気に入ったのは、、、
1位【しょうゆ味の料理×シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)】でした!
煮込んだ近江牛とフルーティなピノ・ノワールの甘さがマッチしていて、もっと味わいたい衝動に駆られました…!
続いて
2位【揚げ物料理×ブラウブルグンダー(ピノ・ブラン)】
揚げ雲呑のサクサク食感や香味野菜、苦味などの要素が、ワインが持つほのかな樽感やクリーミーな質感、ミネラル感などと調和し素晴らしかったです。
3位【甘酢料理×リースリング】
素材の鯛が持つ質感と甘酸っぱい味付けが、ピュアで華やかなリースリングと文句なしの相性でした。
TOP3には入っていませんが、広東式焼売に添えられた「酢漬けの新生姜」も個人的に素晴らしい橋渡しをしていて、個人的に感激でした。
まとめ
調理方法や味付けという切り口からの、ペアリングのお話と実践編の様子をお伝えしました。
魚or肉など【素材】をくくりにするだけでなく、調理法や調味料にも目を向け、口の中での味の広がり・ボリューム(脂分など)や質感を寄せていくもポイントになることがよく分かりました。
また、香りや酸味の強弱、スパイシーさやハーブのアクセントなど、ワインと料理に共通項を持たせることで相乗効果で互いに引き立て合うことができます。
冒頭にも書いたように、ドイツワインというとどうしても甘口のイメージを持たれがちですが、今は昔の話となりつつあります。
これだけ多様な料理に合わせられる辛口ドイツワインとのペアリング、ぜひ楽しんでみてくださいね。
シェフの美味しいお料理と瀧田ソムリエの素晴らしいペアリング提案、私も大変勉強になりました。
Wines of Germany 様、関係者の皆さま、ありがとうございました!
ワインと料理のペアリングに関するおすすめ本
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この記事を書いた人
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個人でワイン講師やオンラインショップ、ワイン通信講座など、ワイン事業を行っています。
「正しく」より「楽しく」ワインを飲める人を増やしたい。そんな想いで日々活動しています。
Instagram:@hiromi_wine
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